2018年12月25日に発表された「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針について」、注目すべきポイントをまとめました。
受入れ分野について
・生産性向上や国内人材確保のための取組を行った上で、なお、人材を確保することが困難な状況にあるため外国人により不足する人材の確保を図るべき産業上の分野(特定産業分野)に限る
✔、現在のところ以下の分野が発表されています
1 介護業
2 ビルクリーニング業
3 素形材産業
4 産業機械製造業
5 電気・電子情報関連産業
6 建設業
7 造船・舶用工業
8 自動車整備業
9 航空業
10 宿泊業
11 農業
12 漁業
13 飲食料品製造業
14 外食業
・大都市圏その他の特定の地域に過度に集中して就労することとならないようにするために必要な措置を講じるよう努める
✔、実効性のある措置が可能かどうかは今後に期待したいところですが「努める」として努力義務にしている点には不安を感じますね
「特定技能1号」について
・通算5年を超えることはできない。
・求められる技能レベルは「相当期間の実務経験等を要する技能であって、特段の育成・訓練を受けることなく直ちに一定程度の業務を遂行できる水準のものをいう。」
✔、特段の育成・訓練なしに動けるというのは大前提ですが、2号の能力レベルの文言と照らし合わせてみると、指示を受けずに自らの判断で専門的技術的業務が可能かどうかというのが分水嶺となっているようですね。
・求められる日本語レベルは「1号特定技能外国人に対しては、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力を有することを基本としつつ、特定産業分野ごとに業務上必要な日本語能力水準が求められる
✔、現在、1号の日本語レベルは最低N4(昔の日本の中学生の英語レベル・・・といったレベルです。今は中学生でもかなり高い能力を持った子もいるでしょうが)とされていますが、N4レベルで指示を理解するためにはそれなりにハードルがあるかもしれません。
・試験は特定産業分野を所管する行政機関(分野所管行政機関)が、「原則として海外で実施する」
✔、留学生から特定技能1号へ変更するということも想定されており、国内で試験を全く行わないわけではないというお話を伺ってはおりますが、ここには「原則として海外で実施する」とされているため、頻度としては多くないということでしょう。今後が気になる部分です。
・第2号技能実習を修了した者については、上記試験等を免除し、必要な技能水準及び日本語能力水準を満たしているものとして取り扱う。
✔、技能実習2号の終わりにある技能検定3級の合格が条件です。
「特定技能2号」について
・在留期間の更新に上限を付さない。配偶者と子には要件を満たせば在留資格を付与
✔、在留資格「家族滞在」の要件と思われますが、別途要件を設けるのか、ここからは伺い知れませんね。
・技能レベルは熟練した技能が求められる。「長年の実務経験等により身につけた熟達した技能をいい、現行の専門的・技術的分野の在留資格を有する外国人と同等又はそれ以上の高い専門性・技能を要する技能であって、例えば自らの判断により高度に専門的・技術的な業務を遂行できる、又は監督者として業務を統括しつつ、熟練した技能で業務を遂行できる水準のものをいう。」
✔、文言として存在はしていませんが、「指示も受けない」で専門・技術的業務を遂行できることが一つのハードルといって良いでしょう。また、現行の専門的・技術的分野の在留資格とは、技能や技術、法律・会計業務等といった分野を示すと考えられますので、これと同等又はそれ以上であれば、相応に高い専門性と言えます。
転職について
同一の業務区分内又は試験等によりその技能水準の共通性が確認されている業務区分間において転職を認める。
なお、退職から3月を超えた場合には、特定技能に該当する活動を行わないで在留していることにつき正当な理由がある場合を除き、在留資格の取消手続の対象となり得る。
✔、この在留資格取り消し手続に関しては、特定技能であるからというわけではなく、現行の高度人材の在留資格における取り消し基準と同様の基準が使われています。
雇用形態について
外国人の雇用形態については、フルタイム、原則として直接雇用
✔、フルタイムとは事業所の所定労働時間全てを勤務する雇用形態です。常勤とされます。
但し分野の特性に応じ、派遣形態とすることが必要不可欠なものである場合には、分野別運用方針に明記した上で、派遣での就労が可能
複数の特定技能所属機関との雇用に関する契約は認めない。
✔、派遣が認められる分野として、現在、漁業・農業分野がアナウンスされています。
受け入れ人数枠の上限設定
分野所管行政機関は分野別運用方針を作成し、向こう5年間の受入れ見込数を記載する。これは、大きな経済情勢の変化が生じない限り、「特定技能1号」の在留資格をもって在留する外国人受入れの上限として運用する。
✔、受け入れ上限を厳格に守るのであれば、特定産業分野はもう少し広げても個人的には良いような気がします。
在留中の監理について
・特定技能所属機関や登録支援機関の届出報告、厚労省などの関係行政機関と連携して適切に対応していく。
・国内外を含め、悪質ブローカー等は徹底して排除する。
✔、実効性のある対策を願いたいところですね。
特定技能所属機関が担うべき義務
・雇用に関する契約の終了時には、確実な帰国のための措置を行う必要がある。
✔、帰国のための旅費等は会社持ちということです。
・職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援(以下「1号特定技能外国人支援」という。)を実施する義務
がある。
・特定技能所属機関については、1号特定技能外国人支援計画を作成するほか、当該支援計画が所要の基準に適合していることや、当該基準に適合する1号特定技能外国人支援計画の適正な実施が確保されているものとして所要の基準に適合していることが求められている。
✔、現行の技能実習制度においても、技能実習計画というものを実習実施者が技能実習機構へ届出、認定を受けます。同じことが求められていると考えて良いかと思います。
・特定技能所属機関による1号特定技能外国人に対する支援の実施状況等については、特定技能所属機関(登録支援機関が特定技能所属機関から支援計画の全部の実施を委託された場合は、登録支援機関)から出入国在留管理庁長官に届け出なければならない。
✔、技能実習制度における実習実施者(受け入れ会社)と監理団体(実習監理・あっせんを行う団体)の関係が、特定技能所属機関(受け入れ会社)と登録支援機関(支援・監理)に置き換わっているだけのような印象を受けます。役割の比重としては、特定技能においては感覚的に特定技能所属機関のほうが重くなっている気はします。
特定技能所属機関・登録支援機関が行う支援
① 外国人に対する入国前の生活ガイダンスの提供(外国人が理解することができる言語により行う。④、⑥及び⑦において同じ。)
② 入国時の空港等への出迎え及び帰国時の空港等への見送り
③ 保証人となることその他の外国人の住宅の確保に向けた支援の実施
④ 外国人に対する在留中の生活オリエンテーションの実施(預貯金口座の開設及び携帯電話の利用に関する契約に係る支援を含む。)
⑤ 生活のための日本語習得の支援
⑥ 外国人からの相談・苦情への対応
⑦ 外国人が履行しなければならない各種行政手続についての情報提供及び支援
⑧ 外国人と日本人との交流の促進に係る支援
⑨ 外国人が、その責めに帰すべき事由によらないで特定技能雇用契約を解除される場合において、他の本邦の公私の機関との特定技能雇用契約に基づいて「特定技能1号」の在留資格に基づく活動を行うことができるようにするための支援
✔上記支援は全て、現行の技能実習制度における監理団体が日常的に行っている業務です。特定技能に関する法制度はあきらかに技能実習制度をベースとして練られています。
受け入れ国に関する制限
・被送還者の自国民引取義務を適切に履行していない国からの受入れは行わない。
✔、最近ではイランやトルコ等、ニュースになった国があります。
・その他我が国の出入国管理上支障を生じさせている不法滞在、送還忌避、濫用・誤用的難民認定申請、悪質な仲介事業者等の放置、人身取引その他出入国管理上支障となるべき事象が生じている国からの受入れについては慎重に対応する。
✔、誤用的難民認定申請は、以前、申請中に就労可能という取り扱いになっていたため、一部の外国人の間で、こういった滞在のテクニックが出回っていましたが、現在は就労不可とされています。